投稿日:2020年9月28日 | 最終更新日:2020年9月28日
インプラントの寿命
ブリッジや入れ歯と違って、インプラントは歯を失った部分に直接埋め込むことから、寿命が気になるという方は多くいらっしゃいます。インプラントは、インプラント治療の受け方やメインテナンスによって寿命を延ばすこともできるのです。インプラント治療は、一度入れたら一生持つの? 虫歯になってダメになることはあるかな? ブリッジや部分入れ歯と比較してどちらが長持ち?
など色々不安に思うことはあるかと思います。
インプラントの平均寿命は、「10年~15年以上」※だと言われています。
※部分および全部欠損症例における 10~15 年の累積生存率は上顎で約 90%程度、下顎で 94%程度である。また抜歯即時埋入や骨移植を伴った埋入では若干生存率が下がるものの 87~92%程度である。
*厚生労働省委託事業「歯科保健医療情報収集等事業」歯科インプラント治療のための Q&Aより引用
ただし、すべての方のインプラント寿命が10年~15年になるわけではありません。
上記にも記載されているとおり、約10~15年たっても約9割の方がインプラントの状態を保持しているので正確な平均寿命はもっと長いと考えられます。
成功率の高さで分かるインプラントの寿命
確かにインプラントの素材は、チタンまたはチタン合金で、腐食することも虫歯になることもありません。被せるセラミックも腐食しません。
しかしインプラント自体が丈夫であっても、歯周病は天然の歯と同じ様にインプラントの周りの骨を溶かしインプラント周囲炎という状態になり、それによってぐらつきが起きたりして脱落してしまうことがあります。
一般的にインプラント治療では、10年の生存率は90%以上と言われています。入れ歯(部分入れ歯を含む)の寿命は平均5年、ブリッジ(接着ブリッジ)は8~9年と言われているので、入れ歯やブリッジと比較しても良好な結果となります。他の報告では、スイスのベルン大学が行った、ストローマンインプラントで治療をうけた患者の10年間の研究報告によれば、痛みや異物感、動揺、インプラントの周囲に感染症がみられないなど、成功基準をクリアした割合(成功率)は全体の97%でした。また、インプラントが脱落せずに残っている割合(生存率)は98.8%と高く、この結果からインプラントの寿命の長さが分かります。また、5年目の生存率と10年目の生存率とでは、ほぼ変わらなかったことが分かっているため、インプラントは正しい使い方をすることで、天然歯と同じように長く使い続けることができるのです。
- ただいろいろな条件により、あまり持たない場合もあります。
ではどんなことがインプラントの寿命に影響するのでしょうか?
予防メンテナンスが大切
歯周病菌は、痛みなくインプラントや天然の歯の周りの歯槽骨を溶かしていきますので、歯周病菌から歯周組織を守って頂くことによって、インプラントだけでなく天然歯も守ることに繋がります。
手術後はトラブルの有無にかかわらず、治療を受けた歯科医院でメンテナンスを受ける必要があります。メンテナンスの主な目的は、トラブルの早期発見と歯のクリーニングを行うプロフェッショナルケアで、定期的に行うことによりインプラントの脱落につながるトラブルを未然に防ぐことができるのです。
インプラントの代表的なトラブルともいえるインプラント周囲炎を防ぐには、日頃の歯磨きが大変重要です。インプラント周囲炎によって歯肉の炎症が進むと、インプラントを支える骨の吸収が起こり、最悪の場合は埋入したインプラントが抜け落ちてしまうのです。インプラント周囲炎を防ぐためには、インプラントの周囲を清潔に保つ必要があることから、毎日きちんと歯磨きを行って、プラークコントロールを心がける必要があります。
・口臭や膿の排出
・インプラントのぐらつきや脱離
まとめ
*歯周病予防には、二つあり、家庭で歯ブラシや歯間ブラシを用いて行う予防ケアいわゆる歯磨き(セルフケア)(ブラッシング)、プラークコントロールなどです。あともう一つは歯科医院で歯科衛生士が行うプロフェッショナルケア(歯周病治療)です。歯やインプラントの表面には歯石、歯垢(プラーク)、バイオフィルムなどが付着します。
トラブルなくインプラントの寿命を長くするためには全身状態も大切です。特に、インプラントの高血圧、糖尿病などの症状は、本人も気付いていない場合があるため、血液検査や尿検査、血圧の測定などが重要となります。
バイオフィルム歯周病を進行させてしまいますので、定期検診やメンテナンスの時に、口腔内全体(口腔内環境)を定期的な機械的な清掃により、バイオフィルムや歯周ポケットの歯周病細菌(歯垢プラーク)、歯石を除去してキレイな状態を維持(歯周病コントロール)していければ、骨吸収を抑えてインプラントの寿命は延びて長持ちしやすくなります。
定期健診時のチェック項目
口腔内のチェック
インプラントのぐらつきやゆるみのほか、歯肉や粘膜の状態などのお口の状態を確認します。また、インプラントに負担がかかっていないかをチェックするために、噛み合わせを見ます。
レントゲン撮影
インプラントを埋入した部分をレントゲンで撮影することによって、周囲の骨としっかり結合しているかどうかを確認するほか、骨吸収などのトラブルのもとがないかをチェックします。
クリーニング
普段の歯磨きが不十分だと、たまった歯垢に細菌が繁殖することにより、歯肉で炎症がおこるインプラント周囲炎を発症する恐れがあるため、通常の歯磨きでは除去が難しい歯垢や歯石を取り除きます。
TBI(ブラッシング指導)
歯磨きには、人それぞれ癖や磨くのが苦手な部分があることから、磨き残しをなくすための正しい歯の磨き方のほか、デンタルフロスやタフトブラシの使い方などの指導を受けます。
手術時に正しく計画され、正確に植立されてるか。
インプラントという治療法を長持ちさせる成功率を上げる要因として、事前に歯科用CTにて顎の骨量や上顎洞までの距離などを検査してきちんと治療計画(診療設計)を立て、人工歯根の埋入ポジション(位置、本数、人工歯根の適切な選択)計画が大切です。水平的(頬舌側的、近遠心的)、垂直的、傾斜角度など3Dです。頬側の骨は2ミリ、インプラント間の距離は3ミリは少なくとも必要であることなど、骨造成に使う骨補填材は何を使うかなど、いろいろなプランがあるのです。
また、人工歯根植立の位置が悪いと、上部構造の形態や歯周組織に悪い影響が出ます。特に抜歯同時にインプラント埋入する方法では、口蓋側寄りの埋入ポジションが特に大切となります。歯肉(粘膜)の厚みによっても埋入深度を変えないといけません。すべての要件を考慮した埋入ポジションにインプラントを入れるには、手術する歯科医師の知見と経験、事前のシミュレーションソフト(SimPlantなど)の設備と実際のオペの技量が必要となります。
インプラント手術は、感染予防に力を入れるこも重要なポイントになります。
感染予防に関係する機材や設備をコストカットしてしまうと、細菌の感染によって
以下のようなデメリットが起こるケースが多いからです。
細菌感染のデメリット
インプラントと骨の結合が阻害される
手術後に炎症が起きる
上記のような事が起こると、結果的にインプラントの寿命を縮める可能性が高くなります。
そのため、感染予防対策に力を入れているのです。
正しいかみ合わせで咬みあってるか?
咬合というものはとても重要であり、前歯だけとか奥歯のみではなく口の中全体がバランス良く咬めるようになることによって咬合力が上手く分散され、ほかの天然の歯も長持ちするので、天然の歯だけに大きく負担が掛からないようにインプラントの歯でも咬ませることが重要です。特に咬合誘導が大切です。
信頼できるインプラントメーカーのインプラント体を用いているか
世界的に4大インプラントメーカーと言われるストローマン、ノーベルバイオケア、ジンマー、アストラテックなどのインプラントは、強度だけでなく、表面性状に優れており、歯周病になりにくいなど長期の残存率において高い実績があり、長期的に長持ちさせたいと思われているならば、品質が高く実績のあるインプラントメーカーを選んだほうが安心です。
転居の際もアフターフォローを受けやすいです。
歯ぎしりや食いしばりから守るためのナイトガードの着用
歯を失う原因の多くは、歯周病と食いしばりや歯ぎしりなどの悪習癖が2大原因と言われており、歯ぎしりや食いしばりは睡眠時に、その人の体重分もしくはその3倍もの力で咬んでいると言われており、その過剰な力により歯が破折したりダメになることが多い。
そういった力から歯を守るためにマウスピースが必要で、着用によって歯が長持ちしやすくなります。
歯ぎしりや食いしばりが強い方は、インプラントを支えている骨に必要以上の負荷をかけてしまい、インプラント周囲炎を悪化させるリスクが高いのです。そのため、歯ぎしりや食いしばりの症状が目立つ方は、
・マウスピース(ナイトガード)の装着によるダメージの軽減
・インプラントの治療前にかみ合わせを改善する
などの方法で、噛む力をコントロールしてインプラントの寿命を延ばすのがオススメです。
就寝時に起こりやすい、歯軋りや食いしばり
全身の健康状態
糖尿病や骨粗しょう症、喫煙の方なども、免疫力を低下させ歯周病を悪化させる原因となります。
たばこを禁煙することも含めた全身の健康管理は、インプラントの寿命を延ばすのにとても大切です。
歯周病の治療と糖尿病治療を行うことによってHbA1cの数値が改善することは近年よく言われています。
しかしながら実際はどれほどの寿命だろうかと不安に思う方も見えるかと思います。
インプラント周囲炎で、インプラントの周りの骨が溶けてしまった、人工歯の破損、インプラントの破折してしまったというトラブルも、全くないとも言えません。そんな時は、かかりつけの歯科医院(歯医者)によっては、きちんと予防メンテナンスに通ってもらうことを条件に、インプラントの保証期間を設けているところは最近は少しづつ増えて来ていますので、万が一何かあった時のために、きちんとした保障は有る方がおすすめです。
しかし、小さな歯科医院ではいくら保証があっても、医院が無くなればおしまいです。