投稿日:2023年2月1日 | 最終更新日:2023年12月6日
歯を失ったまま放置するリスクについて
「歯が抜けて入るけど、しばらく歯がない生活をしていたら、なんだかそんなに気にならなくなってきた気がします。そのままではいけないのでしょうか?」
今回は、歯が抜けてしまって、その後に放置をしても良いかどうか?というご質問にお答えします。
結論→そのままにすると、たくさんの弊害があります!
ということで、歯を失ったまま放置するリスクについて詳しくお伝えします。
〜歯が伸びる〜
歯を失って放置しておくと、本来噛み合うはずの歯が、噛み合う相手を探して伸びてきます。
そうすると、その噛み合わせる歯の、両隣や、その並びの歯に比べて高さが出てくるので、噛み合わせる歯の並びが、不揃いになります。
〜上顎洞が落ちてくる〜
上の歯の奥歯を失って放置することで起きるのが、上顎の顎の骨が下がってきて、上顎洞という副鼻腔がある空洞の底の骨が下がってきてしまいます。そうすると、噛み合わせた時に歯を入れるスペースがなくなってしまうので、入れ歯を入れる時にも苦労します。
インプラントを入れる際にも大変で、入れられない場合や、上顎洞挙上術という上顎洞の底の顎の骨を挙上させる手術を行う場合もあります。
〜歯が倒れてくる〜
歯がない状態が続くと、両隣や近隣の歯が、その歯のないスペースの方に傾いてくる傾向があります。そうすると、歯と歯の間隔も広くなりますし、倒れ込んできた歯のせいで、ブリッジやインプラントを入れようとした時に、無理な角度で製作する可能性もあります。
〜頬の肉を巻き込む〜
頬の粘膜も、歯がないところを補おうとして膨らんできます。そうすると、新しく入れ歯やインプラントを入れたときに、思い切り噛んでしまうなど、弊害が出ます。
〜噛み合わせが変わる〜
噛み合わせは、健康な人でも毎日少しずつ変わります。
ですが、歯が抜けているところを放置していると、歯のない部分を回避しようとしたりするので、噛み方が変わったり、歯が倒れ込んでくることで、健康な人に比べて大きく変わってきます。
〜顎の関節に負荷がかかる〜
歯がないところを避けて、食物を噛もうとする働きを自然としていく中で、均等に顔の筋肉を使わず、噛むところが毎回同じになるなどすると、顎の関節にとても大きな負担がかかります。負担がかかると、口が開きにくい、カクカク音がするようになる、大きな口を開けると痛い、というように、日常生活に支障が出ます。
〜顔の形が変わる〜
歯がないところを放置しておくと、噛み合わせる時や、普段使っている筋肉に大きな偏りが発生するので、お顔の筋肉が歪んで発達します。そうすると、お顔が歪んでくるようになり、顔の形が変わってくることもあります。
〜バランスが取りにくくなる〜
歯が1本ないだけで、噛み合わせのバランスが取りにくくなり、全身のバランスまで取ることが難しくなります。
そうすると、つまずきやすくなったり、転んだりと、ふとした時に怪我をしやすくなります。
このように、全身運動にも支障が出ます。
〜まとめ〜
「1本くらい無くても、見た目もわからなかったら、そのままで良いかな」
と思ってしまう方も、少なくはありません。ですが、これだけの弊害が発生してしまうという事実を知っていただくと、放置しておくことがリスクだということが理解できると思います。
次の治療は特にしなくても良いかな…と考えてしまうこともあると思います。
ですが、現在少数本抜けている場合には、その後の人生でもまだ何かしらの問題で、歯が抜けて、噛むことも喋ることもままならない状態になる可能性は、十分に考えられます。
そうならないようにも、1本くらい、とは思わず、将来的に治療が難しくなって大変な思いをする前に、失ってしまった歯を、放置せずに治療をして補う。という方向性で考えていただければ幸いです。
監修 大串 博
歯科医師臨床研修指導医
日本歯周病学会 専門医
日本口腔インプラント学会専門医
日本臨床歯周病学会 歯周病指導医・認定医 ・歯周インプラント指導医
日本顎咬合学会 認定医
日本アンチエイジング歯科学会認定医
日本歯科医師会認定産業歯科医
インビザラインダイヤモンドドクター
日本審美歯科学会会員
日本血液学会会員
点滴療法研究会会員 高濃度ビタミンC点滴療法認定医
日本歯科医師会会員
「鬼手仏心」
歯科医になった時からの座右の銘です。
生涯常に研修・精進、メスを置くまで終わりのない道を登り続けます。