投稿日:2023年1月24日 | 最終更新日:2023年11月30日
歯根端切除術と意図的再植術とは? 福岡市博多のインプラント専門医
根管治療では十分に清掃できなかった部分(根の先)を切断して感染除去し、その切断面に特殊なセメントを詰めて根管内の感染を遮断する治療方法です。
今までの歯根端切除術では成功率が40~60%と決して高いとは言えない方法ではありましたが、現在のマイクロスコープを併用した外科的歯内療法では飛躍的に治療の精度が高まり、90%以上の成功率が報告されています。
※ここでいう治療の成功率とは、根尖病変の治癒を指します。ですので、どれくらい歯が長持ちするかという事とは別になります。
歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)
根っこの先を3ミリほど除去し歯を保存する治療法です。
歯根端切除術はマイクロスコープ下で行います。術式の流れとしては…
- 骨に3~4mm程度の穴を空けます
- 歯根の先をマイクロスコープで見ながら3mm程度歯根を切除します
- 切除後は特殊な染め出し液で切断面を染め出し、染め出された感染源を確認します
- 超音波チップを使用して逆根管形成を行ない汚れを除去します
- 逆根管充填という方法で根管にMTAを詰め、細菌の出口を封鎖します
上記の方式で感染源をシャットアウトします。この流れを必ず行っています。
昔は超音波チップではなく、大きいバーのようなもので逆根管形成をしていたので、大きく歯根を削らざるを得なかったのですが、現在では専用の超音波チップによって形成することができるので、根管の形を変えることなく保存的に形成することができます。
これにより従来の歯根端切除術に比べて95%まで成功率が上がりました。一般的な口腔外科の歯根端切除よりも侵襲が少なく患者さんの負担も軽減されます。治療時間は歯の本数にもよりますが、1回のチェアタイムは2時間くらいを見ておいてください。
部位によっては歯根端切除ができないことがあります
上下7番目の奥歯、下顎の5番目の小臼歯でオトガイ孔(下顎神経)に近い場合など、歯の部位によっては歯根端切除ができないことがあります。
その場合は意図的再植術があります。
意図的再植術
意図的再植術とは、歯根端切除術を口の中で行えない場合、一度歯を抜いて口の外側で歯根端切除術を行い、もう一度元の場所に歯を戻すと言う治療法です。そのため、意図的再植術は一般的に「意図的再植術+歯根端切除術」と考えていただきたいです。
精密な根管治療を行ったにもかかわらず、根管治療では治らなかった場合に行います。そのような場合、歯を1回抜歯して、その場で根の先を切除しお薬を詰めて元の場所に埋めいれる方法が意図的再植術です。
歯根の周囲に付着している歯根膜は乾燥すると細胞が死んでしまい、再植時の成功率が下がってしまうため、抜歯してから17分程度でスピーディに行う必要性があります。また、歯根膜を傷つけないように抜歯処置には時間をかけます。
このように意図的再植は非常に注意深く行う必要があるため、専門的知識を持った歯科医師が適切な治療環境で行うことが成功する鍵であり、成功率は約80%程度と言われております。
この治療の主な対象歯は7番目の大臼歯や下の5番目の小臼歯であり、歯の根の形態が複雑な場合には抜歯がスムーズに行えなかったり、抜歯の際に歯が割れてしまう可能性がありますので適応となりません。
意図的再植術を行う事があるケース
- 第二大臼歯(7番目の歯)・第三大臼歯(親知らず・8番目の歯)
これらの歯は口腔内で歯根端切除術を行うには、位置が奥過ぎて困難ですので意図的再植術を併用して歯根端切除術を行います。 - お口が小さく通常の歯根端切除術が困難な場合
このようなケースも、意図的再植術を実施して問題を解決します。
- 歯根が破折してしまった場合
歯根が破折してしまった場合は、概ね抜歯すること余儀なくされてしまいますが、どうしても残したいという要望があった場合、歯を一度抜き、破折してしまった部分を接着で補修した後、元に戻します。適応症としては、上の前歯や小臼歯部に適しています。
- 歯根の側面に穴があいてしまった場合の補修
歯根の側面に穴が空いてしまい、そこから骨の部分に感染が及んでいる場合は、通常の根管治療では修復が難しいため、一度抜歯を行い、穴を特殊な材料でリペアしてから歯を元の位置に戻します。
- 治療が難しい根管治療
根管治療は通常根管内から治療を行うのですが、根管内からの治療が不可能な歯で、解剖学的理由などで、外科治療が行えない場合に行います。一度抜歯をし、根管の先端にある病変を取り除き、歯根の先から根管充填材と呼ばれる薬剤で歯根を塞いでいきます。
- 根の先が神経や血管に近い場合
処置する歯の根の先が神経や血管に近い場合に、口の中で歯根端切除術を行うと、これらの大切な組織を傷つけてしまう可能性があるため、意図的再植術を行います。
意図的再植術は「歯の延命処置」です。
つまり、歯の保存ができたとしても、将来にわたって永久的に歯が保存できるわけではないということを患者さんにご理解いただき、その上で意図的再植術を行います。とはいえ、歯を残してほしいと願う患者さんのお気持ちは十分理解できますので出来るだけの対応策として行ってます。
監修 大串 博
歯科医師臨床研修指導医
日本歯周病学会 専門医
日本口腔インプラント学会専門医
日本臨床歯周病学会 歯周病指導医・認定医 ・歯周インプラント指導医
日本顎咬合学会 認定医
日本アンチエイジング歯科学会認定医
日本歯科医師会認定産業歯科医
インビザラインダイヤモンドドクター
日本審美歯科学会会員
日本血液学会会員
点滴療法研究会会員 高濃度ビタミンC点滴療法認定医
日本歯科医師会会員
「鬼手仏心」
歯科医になった時からの座右の銘です。
生涯常に研修・精進、メスを置くまで終わりのない道を登り続けます。